No.5 泰山、大河、大海

中国の歴史書『史記』には「泰山が大きな山になったのは、どのような小さな土塊でも辞退することなく受け入れたからであり、大河も大海も、どのような小さな川の水も受け入れたが故に、大きく深いものになった」とあります。これを人間に置き換えるなら、大人物と呼ばれる人はつまらない意見でも都合の悪いものでも、他の言葉に耳を傾け、受け入れて学ぶということでしょう。

 

人間の大きさや深さは、その人がどれだけのものを受け入れられるのかという器、真の包容力によるものであり、才覚だけではありません。どれだけすばらしい才能や頭脳に恵まれていても、自己都合だけで、包容力や理解のない人は大人物にはなれませんし、その考えは人に届きすらしません。

 

自らに力や才能があると思った時、人は得てしてそれを振り回し、周りのを構わず切りつけて回ることがあります。「能ある鷹は爪を隠す」は、なかなか難しいもので、立派な爪があると思うと、ついつい使ってみたくなるのです。しかし、それは結局、自らの身を傷つけ、滅ぼすことに繋がっていきます。

 

本当に実力・才能のあるものほど、人の意見や考えをよく聞き、現実や相手をよく見て自分を知ります。すばらしい考えや正しい意見を言うときは、余計なものを入れずに謙虚に述べます。正しい意見には皆が賛成するしかないのですから、わざわざ大きな声で高圧的な態度で言えば、反発され意見が通らなくなるからです。

 

自分専用の歪んだ小さなものさしだけで、他の人や意見を計って取捨選択すれば、受け入れられるものはわずかになります。そんな不確かなものさしを捨て、その人や意見をそのままに見て聞く。取捨選択は、最後の最後、事に当たるときに考えればいいのです。はじめから、自分の思いで選り好みしていては、都合の良いものだけになって現実も自分も知れず、そもそも人すら集まりません。

 

何かを成そうとする時、何かを変えようと思う時、泰山・大河・大海の如く「自分を受け入れる」姿勢が、あなたを大きく深くしていくことでしょう。